カテゴリ: 全身管理

歯科治療と心疾患

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

日常の診療にて気付いた事をブログに記載するようにしています。

今回の心疾患の話題も、日常臨床でよく経験することです。

心臓の弁に異常がある方は歯科治療をする前に注意が必要です。

もし心臓に細菌が感染し、感染性心内膜炎を引き起こした場合は、至死的な状態になることを留意しておかなくてはいけません。

感染性心内膜炎は、歯科疾患や歯科治療が原因とされています。

感染性心内膜炎で同定された細菌700種以上のうち約400種が歯周病関連細菌との報告があります。

つまり、口腔内にいる細菌が、口腔内の傷口より血流を伝って心臓に達するということです。

従って、抜歯や歯周病の治療をおこなう際は、予防が必要と言われています。

感染性心内膜炎は、心臓の弁膜や心内膜に異常のある場合に発症する危険性があります。

予防には抗生剤(アモキシシリン)の術前投与が一般的です。

歯科治療の1時間前に2g内服してもらい、治療を行います。

患者さんから、「私は危険だから・・・」などと申し出る方はいません。

十分な問診の後に、疾患に対する危険性を認知し判断するのは歯科医師です。

信頼のおける歯科医師、医師と連携をとること。

そして、真のかかりつけ医を持つことが重要です。

 

 

 

投稿日: by nomura

高血圧症

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

ご自身では健康と思っていても、治療前に血圧を測ると高血圧症ということがよくあります。

特に何年も健康診断を受けていない方は要注意です。

日本高血圧学会の示す高血圧の表を以下に示します。

診察室)血圧に基づいた脳心血管リスクの層別化

 
正常高値血圧
130-139/
85-89mmHg
I度高血圧
140-159/
90-99mmHg
II度高血圧
160-179/
100-109mmHg
III度高血圧
≧180/
≧110mmHg
リスク第一層
(危険因子がない)
付加リスク
なし
低リスク
中等リスク
高リスク
リスク第二層
(糖尿病以外の1~2個の危険因子、メタボリックシンドロームがある)
中等リスク
中等リスク
高リスク
高リスク
リスク第三層
(糖尿病、CKD、臓器障害/心血管病、3個以上の危険因子のいずれかがある)
高リスク
高リスク
高リスク
高リスク

当院では、医師による高血圧症の診断を受けている方のほか、

血圧が高そうな方にも血圧測定することがあります。

全身管理を専門にしていますので、血圧が高そうな患者さんはわかりますので、モニターをして治療するようにしています。

歯科治療において、浸潤麻酔を使うことが多くあります。

麻酔を使用すると、麻酔に含まれるエピネフリンにより血圧が上がります。

ですから、コントロールされていない高血圧症の方は無理をして歯科治療せずに、内科もしくは循環器科を受診してもらいます。

コントロールが良好になれば、安心して歯科治療をおこなうことができます。

定期的な内科健診を受けていない方は、是非受診されることをお勧めいたします。

 

 

投稿日: by nomura

モニタリングのすすめ

尾澤歯科医院では問診の際、循環器異常がある患者や疑いのある患者に対し、モニター下(血圧、心電図、パルスオキシメーター等)にて歯科治療を行っています。

問診にて何もないが、血圧が高そうな方にも血圧測定を行います。

高血圧の診断を受けている方は、コントロールをされている場合がほとんどですが、

ご自身でも高血圧の認識が無い方で、重度高血圧症の方が時々来院されます。

重度高血圧症とは、収縮期血圧が≧180または拡張期血圧が≧110.

しかし重要なのは、高血圧状態が持続すること。

血圧は常に変動しており、一時的の高血圧は問題にはなりません。

高血圧の持続により、動脈硬化を起こし、脳血管障害、心疾患、腎疾患、血管疾患などの合併症を引き起こします。

また、歯科医院にて使用する局所麻酔薬には、血管収縮薬が含まれており、

血圧の更なる上昇を引き起こします。

患者からの情報のみで歯科治療を行うことは、危険であると実感しています。

投稿日: by nomura

骨粗鬆症のおくすりについて

骨粗しょう症と診断されて、お医者さんでお薬をもらっている患者さんが多くいます。

ビスフォスフォネート製剤(以下BP製剤)というお薬があります。

我々歯科医師にとって大変厄介なお薬なので、説明します。

BP製剤は簡単に言うと骨を硬くし、骨折を予防したり、癌の進行を止めるお薬です。

骨は常に骨を増やす細胞と骨を溶かす細胞が働いていてバランスをとっています。

BP製剤はこの代謝機能をストップさせることで、骨をカチカチにしてしまうというお薬なのです。

さて、どうして歯科医院でBP製剤が厄介な薬なのでしょうか。

我々歯科医師は、お口の中の歯や骨をケアする仕事のため、骨の代謝がなくなると困ります。

また、傷が治らず、骨が壊死することがあります。

もっと困ったことに、壊死した場合、治療方法がないということです。

例えば、歯を抜いた後に骨の代謝がないと、傷がふさがらず、骨が壊死することがあります。

歯槽のうろうは、ばい菌で骨が減っていく病気ですが、治療の際、骨に触る治療があります。

歯槽のうろうの手術が出来なくなります。

インプラント手術は骨に人工の歯根を植える手術です。

BP製剤を飲んでいる方のインプラント治療は禁忌です。

骨折を予防することにより延命につながる薬ですが、

歯科の分野で起こる合併症について、お医者さんはどれだけ理解しているか大変疑問です。

なぜなら、当院に来院する患者さんのほとんどがBP製剤の副作用について知らないからです。

薬を処方する際に副作用についての説明をしていないということです。

日本口腔外科学会の指針では、3年以上内服にている場合は、3ヶ月以上内服を中止してから抜歯をすることになりました。

すぐに治療が必要でも治療を待ってもらうことになります。

投稿日: by nomura

心臓病とむし歯

心臓病の人は、むし歯や歯周炎に注意しましょう。

むし歯や歯周病の病原菌は、お口の傷から体に入ります。

静脈を伝って心臓に達すると、心臓病が悪化することが分かっています。

感染性心内膜炎という病気をひきおこした場合、

ハイリスク患者は死亡率が高いといわれています。

心内膜炎を防ぐため、歯科治療前に抗生剤を予防投与します。

・人工弁置換患者
・感染性心内膜炎の既往がある患者
・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患
・体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
・弁膜症
・閉塞性肥大型心筋症
・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
・人工ぺースメーカーあるいはICD植え込み患者
・長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者

以上の患者に対し、抗生剤予防投与をします。

歯石をとる治療でも予防します。

基本的に少しでも出血するような治療は、予防します。

投稿日: by nomura